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空想作家と専属イラストレーター&猫7匹の                 愛妻家の食卓

空想作家と専属イラストレーター&猫7匹の     愛妻家の食卓

『ぼくらはみんな』・1話~4話

『ぼくらはみんな』


第1話・・・『プロローグ』

ボクは旅をするノラ猫、グリーン。

どうして旅なんてしているのかというと昔、あるノラ猫と出会ってその猫に憧れたからだった。

その名はサスライ・・・ボクは彼を追いかけるように旅に出たんだ・・・

しかし、それは困難だった。ノラ猫の世界には縄張りというものがある、そんなもの無い場所もあったけど、ほとんど無いにひとしい。

縄張りというものはそこに住むノラ猫たちが決めたルールで生活している。

ボクはそれを感じる度に風来坊で良かったと思う・・・

ボクにはサスライさんのような強さは無いけど、誰にも負けない逃げ足の速さがあった。

そう、ボクはそこら辺の奴には負けない足の速さで生き残ってきたんだ。それはボクの唯一の自慢だった。

旅で1番の楽しみは、なんといっても出会い。色んな猫たちに出会って、その思い出がボクの宝物だった。

だからボクは先へ、先へと進んだ・・・まるで宝探しのように・・・

そして、ボクは出会った。

ある不思議な街で不思議な猫たちに・・・

その猫たちというのは2匹で、1匹はニャジロウというこの世の中のことの全てを知っているとても不思議な猫・・・

そして、もう1匹は変な話し方をするノラヘイという少し変わった猫だった。

本当かどうか怪しいけど、そのノラヘイという猫は元は人間だったという。

そのノラヘイを人間から猫に変えたのがニャジロウだと言っていた・・・

そのおかしなこと言う2匹と話をしている時にボクは

「もっと知りたいんだ、世界を知りたいんだ」

と言ってみた。すると、ニャジロウがこう言った。

〔世界だって?そりゃ全てを知るのは無理だな・・・しかし、ここから少し行った所に動物園という世界の動物が集まっている場所がある。そこに行けば少しは世界が見えるかもしれない、教えてやるから行ってみてはどうだ?〕

「世界の動物?動物園って?」

ボクは何も知らなかった。知りたいばかりで世界がどんなに広いか、動物が猫やネズミや犬や鳥や人間の他に沢山いることさえ。

ボクは迷うことなく教わることにした。


そうして今、ボクは動物園という場所を教わったとおりに向かっていた・・・


「ここが数えて44本目の電信柱・・・ここに居ればネズミの絵が描いてあるトラックが止まるんだったな、それでトラックの荷台に飛び乗って動き出したら魚を130匹数えて飛び降りれば着くはず・・・・・・あっ、本当に来た!」

ボクは恐る恐るネズミの絵が描いてあるトラックの荷台に飛び乗った。

すぐにトラックは動き出した・・・

「魚が1匹、魚が2匹、魚が3匹・・・魚が22匹・・・魚が45匹・・・魚が60匹・・・魚が83匹・・・魚が100匹・・・魚が130匹・・・えいっ!」

飛び降りると目印になる大きな鉄塔・・・

「凄い、ニャジロウが言ったとおりだ・・・ということは、その下が目的の動物園がある!」

ボクは走った。素晴らしい出会いを期待しながら・・・




つづく。




第2話・・・『天王寺』


こんな街中に世界中の動物が居る?

そんな疑いをもちながらもボクは夢中で鉄塔を目指していた。

そして、その近くまで行くと街のノラ猫たちが井戸端会議をしていた・・・

「面倒なことにならなければいいけど・・・」

そう思ったはなから、ボスらしき体格の良い猫が近づいてきた。

ボクはいつでも走って逃げられる用意をする。

〈おい、よそもんやな?ここはオレの縄張りやけど、なんや?お前〉

「す、すみません。ただの通りすがりです・・・」

ノラヘイと同じ言葉使い・・・

〈通りすがり?何処へ行くんや〉

「あの鉄塔に・・・」

〈なんや、通天閣かいな〉

なんだか見た目より気さくなノラ猫だった。

「通天閣?・・・いえ、ボクはその下にある動物園という場所に行きたいんです」

〈・・・動物園ってお前・・・あそこは危険や、やめとけ〉

「危険な場所だなんて聞いてないけど・・・そんな危険な場所なんですか?」

〈近くに行けば分かるが、あの中から聞こえる奇怪な鳴き声・・・あの中にはどえらい怪物がいるうわさや、一度迷い込んだら二度と出られへんらしいしな〉

「・・・」

〈二度と出られへん言うのは嘘や(笑)。でも、鳴き声は聞こえる。オレら地元のもんでも近寄らない場所やで、何でかは知らんけど近づくなと言われ、伝えられている場所や〉

「・・・でも、ニャジロウとノラヘイは楽しい所だと・・・」

〈ん?ニャジロウにノラヘイ・・・お前、仲間なんか?あの不思議なあいつらの仲間なんか?〉

「仲間というか知り合い・・・やっぱりどこで聞いてもあの2匹は不思議な噂なんだ・・・」

〈そりゃもう、めちゃくちゃな奴らやったで〉

「一体、何をやったんだか・・・」

〈そうか、そうか、あいつらの仲間か、それなら分かる気がする・・・気をつけてな〉

「は、はい・・・」

自分の言いたいことだけ言って行ってしまった・・・

でも、本当に行っても大丈夫なんだろうか?信じる相手を間違えたかも・・・

そう一瞬思ったけど、ボクの好奇心のほうが上をいった。

ボクは再び走った。

「ここかぁ・・・」

大きな、大きな鉄塔のすぐ側に動物園はあった。

「ホントかなぁ・・・」

近くに行って、ますますボクは不安になった。

ニャジロウに昼間は人でいっぱいで入ってもすぐに追い出されるから、夜かもしくは猫曜日にと言われていたのでボクは夜を待った。

そして、待ちに待った夜・・・

人が居なくなった動物園の中からはあのノラ猫が言ってとおり、聞いたことが無い鳴き声が聞こえていた。

「ごくり・・・」

それは、とても不気味だった・・・

それでもボクは恐る恐る中へ潜り込んだ。

「・・・」

動物園の中は広く、薄暗くてますます不気味だった。

だけど、やっぱりボクの好奇心は上をいく・・・

「よし、時計回りで行ってみよう」

辺りを見渡しながら歩いて行くと沢山のオリが並んでいるのが見えてきた。

「類猿人ゾーン?・・・何かは知らないけど、ここはみんなオリの中にいるんだ・・・危険なのかな・・・」

最初のオリに近づくと、そこには人によく似た動物がボクを見つけて手招いた。

〈こっちにおいで、君は猫だろ?〉

ボクは言われたとおり近づいた。

人の形をしていて、でも、小さくて、ボクらと同じ全身に毛がある・・・

「あなたは誰?人?」

〈おいらはチンパンジー、サルという動物さ〉

「サル?」

それは、本当に人によく似た動物だった・・・




2話、終わり。



第3話・・・『サルたち』

最初に出会ったチンパンジーというサルはとてもおしゃべりだった。

〈サルっていうのは人と同じ種類なんだ。そう、おいらたちは人と同じ・・・いや、先祖みたいなものだからもっと偉いんだぞ〉

「・・・それなのに人はあなた達をオリに?」

〈・・・まぁ、しんみりした話はこれから先、いくらでも聞ける。ここに来るのは初めてなんだろ?〉

「うん」

〈それなら君は運がいい、初めにおいらに会ったからな〉

「・・・そうなんですか?」

〈そうだ、わけも分からずここに入ってきて逃げ出した猫は数知れず居た。まずは心構えが必要だ、だから初めにおいらと会って正解なんだ〉

「・・・心構え?それをボクに教えてくれるの?」

〈あぁ、ここがどんな所か知っているかい?〉

「動物園でしょ?世界中の動物たちがここに暮らしているって聞いて来たんだ」

〈うん、確かにここには沢山の動物がいるけど、みんな人に飼われているんだ〉

「ペットみたいなものなの?」

〈ペットというのは人と一緒に暮らして家族みたいなものだろ?ここはそうじゃない・・・ただ、人に飼育されているんだ〉

「どうして?」

〈なら、君はここに何しに来たんだ?〉

「世界の広さと、その不思議さを知るために」

〈やっぱり、そうだろ?人も同じさ、そのためにおいらたちをこうしてオリに入れて並べているんだ、世界は広い!そう人が人に教えるために〉

「そうなんだ・・・人のためにオリに入れられて悲しくない?」

〈そうだな・・・今、ここにいる動物たちはここで生まれた動物ばかりだから悲しむ奴も少ない・・・だけど自分が何なのか、自分の生まれるべきところを知っている者にはやっぱり悲しい所かもしれないな〉

「あなたは?」

〈おいらはもちろん悲しい方だよ・・・だけど今に人より賢くなって、ここにいるみんなを解放してやるんだ、だから今はいろんな人をこのオリの中から観察して勉強してるんだ〉

「・・・そうなるといいね」

〈あぁ、きっとな・・・だけど、知らない奴には質問しすぎるなよ、奴らはここしか知らない・・・そういう奴らにはこんなオリの中でも幸せな世界なんだ〉

「・・・うん」

〈まぁ、おかしな奴らばかりだから話をまともに耳をかすな〉

「分かった・・・」

〈と、もう1つ、中には君には想像もできない恐ろしい姿の動物が居るけど、みんな良い奴ばかりだから見た目で判断せずに話してみてくれ〉

「うん」

〈じゃあもう行きな、隣から続く小さなサルたちはうるさいばかりで話にならないから、その先に居る茶色い大きなオランウータンって奴と真っ黒なゴリラって奴の話を聞いてみな、少しはおもしろい話が聞けると思うよ〉

「オランウータン?ゴリラ?・・・」

〈大きいけど悪い奴らじゃない、君がここに来て良かったと思えることを祈るよ・・・じゃあな〉

「うん・・・ありがとう」

そうして、ボクはチンパンジーのオリを後にして、続く騒がしい小さなサルたちのオリを抜け、オランウータンというサルのオリの前で足を止めた。

「・・・本当に大きい・・・」

〈・・・なんじゃ?ワシを拝みに来たのか?〉

とても低い声でボクに近づいた・・・

「ボクはノラ猫のグリーンです。少しお話を・・・」

とても威圧感があった。

〈もう、今日の拝観は終わったが・・・まぁ、よかろう〉

「あなたは誰?凄く偉い方なの?」

〈何じゃ、ワシを知らんのか・・・ワシはこの世で1番偉いサルじゃ〉

「・・・本当なの?」

〈本当じゃ、げんに毎日、人というサルはワシに食べ物を差し出しこの部屋の掃除もしている。毎日、多くの人がワシを崇めていく〉

「・・・そうなんですか・・・」

〈こうやっての、手を出しているだけでワシに食べ物を差し出すんじゃぞ〉

「すごいですね・・・」

ちょっと変わってると思った。

〈ほら、頭をここに〉

「えっ?・・・はい」

1歩進んで近づくとオランウータンはボクの頭に手をかざした。

〈よし、お前さんの悪運をはらってやった。安心して進むがよい〉

「あ、ありがとう・・・」

ボクはどう接したらいいのか分からず、そのまま先に進んだ。すると、最後のオリにゴリラというとても大きくて強そうなサルがいた・・・

「こんばんは・・・」

勇気をだしてゴリラに声をかけてみた。

〈おや?可愛い猫ちゃん・・・どうしたの?迷い込んだの?〉

姿に似合わない小さな声のメスだった。

「迷い込んだんじゃありません、ここを見に来たんです」

〈あら、小さいのに勇気があるのね。ところで、人を見なかった?〉

「人ですか?・・・人なら昼間にいっぱい見たけど・・・」

〈そうじゃなくて、私の愛しい人よ〉

「え?誰のことですか?」

〈ちかごろ毎日、私の絵を描きに来てるんだけど、今日は来なかったの〉

「・・・」

〈病気なんてしてなきゃいいけど・・・〉

どうやらゴリラはその人に恋をしているようだった

「ごめんなさい、ボクはここが初めてだからあなたの愛しい人は知らないんだ」

〈そう・・・仕方ないわね・・・明日になったら来るかしら?〉

「うん、きっと明日は来るよ」

〈そうね、明日はきっと来るわよね・・・ありがとう〉

「いえ・・・それじゃあボクは先を急ぐので失礼します・・・」

〈もう行っちゃうの?もっとあの人の話を聞いてほしいのに〉

「・・・いえ、ボクは先に・・・」

ボクは逃げるようにゴリラのオリを後にした。

「本当に変わった動物ばかり・・・まともに話が出来る相手がいるといいけど・・・」

ボクはこの先に不安を感じた。

そして、少し歩くと大きな池が目の前に現れた。

「アシカ?・・・」

池に立つ看板にはそう書かれていた・・・



3話、終わり。



第4話・・・『アシカ』

アシカ?・・・アシカとはどんな動物なんだろう・・・

「池に居るといったら魚か・・・カメ?」

ボクは真っ暗な池を覗き込んだ。

「・・・何も見えない・・・」

そう、つぶやいた瞬間!

ザブーン!

突然、水しぶきと共に水の中から真っ黒な大きなネズミが現れた。

「わっ!お化けネズミ!・・・ごめんなさい」

ボクは猫だから、そのお化けネズミにやられると思った・・・

〈わっはっは!オレ様をネズミだと?〉

「ネズミじゃない?・・・」

〈オレ様は海の荒くれ者アシカだ、地をはう小さなネズミなんかと同じにするな、それにお前、猫だろ?大きくたってネズミを怖がってどうする〉

「は、はい・・・でも、大きくて、ビックリして・・・それにボクが苦手な水の中から出てきたので・・・水、平気なんですか?」

ボクは水が大嫌いだった。

〈本当にまったくオレ様のことを知らないのか?〉

「はい・・・ボクが知っている動物といったら、犬とネズミと鳥と・・・後、さっき会ったサルぐらいで、水の中に居る動物なんて・・・」

〈じゃあ教えてやろう、ほらっオレ様の手を見てみろ、泳ぐためにこんな手をしている〉

「わっ!・・・鳥の翼みたい・・・」

〈足も見てみな!〉

そういうとアシカは水の中に潜って魚のような大きな足を見せた。

「・・・本当に水の中にいるんだ・・・」

〈オレ様はほとんど水の中で生活している。魚より早く泳ぎ、魚を食べるんだ。見ときな!〉

アシカは本当に凄い速さで池をグルグルと泳いで見せた。ボクは今までに見たことも無い想像もつかないその大きさと姿に唖然とした。

「凄い・・・」

ボクがそう言うと、アシカは池の真ん中で水の上に飛び上がった。

〈見ろっ!〉

「わっ!」

凄く大きな体で凄い水しぶきを上げた。ボクが思わず後ずさりすると、アシカはゆっくりと泳いで近づいた。

〈本当に水が苦手らしいな・・・しかし、オスたるもの何にもビクビクしていてはダメだ、オレ様のように堂々としろ、そんなことではメス1匹もついてこないぞ〉

そう言ったかと思うと今度は耳が痛いほどの大声で叫んだ。

〈オウッ!オウッ!オウッ!〉

すると、同じ池のどこからか細く、ひとまわり小さなアシカたちが6匹も集まってきた。

〈みんなオレ様の嫁たちだ〉

「えっ?嫁?」

〈ハーレムってやつさ、強いオスだけが沢山のメスを嫁にすることができる〉

「ボス猫のようなものかぁ・・・」

〈猫の世界ではボスというのか?オレ様はキングだ、アシカのキングだ〉

「キング?本当に強そうだね」

〈強いさ、海の中なら1番だ、お前がよければ友達になってやるぞ〉

「はい、光栄です。ボクはグリーン、旅をするノラ猫グリーンです。またいつか必ずここを訪れるので、また凄い泳ぎとジャンプを見せてください」

〈もちろんさ、いつでも寄ってくれグリーン、今度はみんなで歓迎をしよう〉

「ありがとうございます」

そうして、ボクは池を後にした・・・

オランウータンといいアシカといい自分がこの世で1番だと思っている。

あんな小さな池で、オスは自分しかいないのにおおいばりで世界1だと思っている・・・

ここの動物たちには自分のオリの中が世界なのだろうか・・・

みんながそうなのだろうか?・・・

ボクは先に疑問を感じながら先へと進んだ・・・

そして、次に見えた看板にこう書いてあった。

「クマゾーン?・・・」


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